『もしも叶うのなら君のそばで永遠を』














 木の、幾つもの幾つもの葉の隙間をぬってたどり着いてきた光は、淡く色づいて見えた。すでに紅葉、ともすれば枯葉の季節だというのに、それは優しい緑色だった。
 手をかざす。黒い陰となったそれのふちはうっすら赤く、そしてそれはなんだか眩しく見えて、顔が微笑う。
 「なんか、面白いものでもありました?」
すぐ隣に座った法師がこちらを見て訊ね、彼女は別に、と、それでも微笑いながら言った。
 上を見上げるのをやめて、今度は自分の手を中心に見つめ始めた。重ねて、組んで、絡ませて。手甲を取った手がそれまで思いもしなかったほどに白く見え、なんとなく違和感を覚える。

 そういえば以前、法師にも言われたような気が、する。お前の手はやることの割に白くて――細くて、女らしい・と。
 その時は確か冗談じゃないとか憤慨してしまった気がするが、そしてなんとなく照れくさくて勢いそのまま相手をひっぱたいてしまい非常に申し訳なく思ったりした気もするが、とにかく、


そうかもしれない。


と、珊瑚は初めて思った。






 「なんだ、手遊びですか?」
不意に法師が珊瑚の手元を覗き込んできた。一瞬肩をびくっと跳ね上げ、しかしどうにか後ずさるのはこらえる。

 逃げちゃ駄目。

 「…別に遊んでたんじゃ、ないよ。……なんか色々思い出してたんだ。」
「へぇ」
向けられた視線が、何を?と訊いていたので、少々渋々ながらも答える。
「…色々。なんか、逢ってからの、起きたこと全部。……ちょっとしか経ってないけど、いっぱいあったね。」
 ふっと微笑う。
「…そうですね。私も、あの二人…いや、三人に逢ってから、そしてお前と逢ってからは、たくさんのことがありました。」
微妙に七宝を忘れかけた発言に、しかし、そうだね・と同意する。
 「ていうか、法師さまの前だし、法師さまに限って話すけど、」
笑い半分、怒り半分の表情で、
「人のことべたべた触るし見ず知らずの人にも平気でとんでもないこと抜かすしなんにも言わないし何考えてんだか分かんないし無茶するし」
「…すいません」
 苦笑いを浮かべながら一応謝ってみた弥勒に、けれどくすっと笑って、
「…だけど、なんだか放っておけなかったんだ」
 膝を立て、そしてそこに腕を、頭を乗せる。
「放って、おけなかったんだよ。一緒に居たいって、思えたんだ。」

 腹が立つより嬉しくて、考えてることが分からないより優しくて。



 離れるよりは、一緒に居れたらいいな、って、思ったの。
















 こと、とそのまま身体を傾けると、相手の片腕と胸にぶつかった。晩秋の風よりはずっと温かく、少し冷えていた頬がじんわりと緊張を解いていく。
 「…私も、そんなようなもん、ですかね。」
ふと弥勒が言い、
「最初は、とっつきにくい女だと思いましたよ。強くて、強いだけに近づけなくて、あまり二面性なんかも無くて真っ直ぐで。どちらかっていうと犬夜叉に似た感じで」
 そこで少し不満そうにじろっと睨まれ、苦笑を漏らす。そして、

「でも、それより何より、可愛い人だと思った」


珊瑚の目がかなり意外そうに丸く見開かれた。












 強くて強がりで、優しくて。

 もう壊れかけてぼろぼろの橋の上にそれでも独りで立とうと必死、そんな感じ。どうしようもなく危うくて、思わず守ろうと手が出るような。

 だけど手は出せないような気高さが漂った。







 でも、だからこそ、手を出したくて触れたくて。




















 「…だから、嬉しい。」
「は?」
「今が、ね。」


 自分の左脇にぴったりくっついている珊瑚の肩から腕を回し、とてもとてもゆっくりと、抱き寄せる。微かに甘い髪の匂いがした。





















 「……なんか、どきどきするよ」
少し頬を赤くして言うと、
「んー…私も、かも。知れません。」
なんだか酷く満足げに、そう言われた。






























 「大事なものを抱きしめるときというのは、誰だって、なんだってどきどきするものなんだと思いますよ」













 珊瑚の顔を覗き込むようにして、

「特に、それが手に入れられそうも無かったものだったなら。」




































 高くて手の届かない所に咲いた小さいたんぽぽ、素早く飛び去ってしまう少し大きな油蝉。
 幼い頃どうしても捕まえたくてだけど出来なくて、泣きそうになると母が、父が取ってくれた。
 そういう時はどうしてだろうか、酷く楽しくて嬉しくて、取ってもらったそれを壊れないように出来るだけそっと、でも、ぎゅっと強く抱きしめたんだ。
 どんなにそっと触っても砕けてしまいそうな気がして結局あまり力は込められなかったが、その存在を確かめられるだけでどうしようもなく幸せな気がした。




 そう、そんな感じ。
























 君が居てくれると、嬉しいです。
 抱きしめたいけど、壊れそうで怖いから、あまり強くは出来ません。
 でもそれでも、君が居る・と思えて、なんだか酷くしあわせなのです。
 しあわせの中にいるとなんだかもっと欲しくなってしまうけど、






 やっぱり、「それ以上」は怖くって。















 でも、その怖さすら、なんだか、「愛しい」と思ってしまいます。




























 これを、この感覚を人が「愛」と呼ぶのなら。

 それを持っている私達は、とてもしあわせなのだと思うんです。





 「しあわせ」なら、もう、感じているけどね。

































 だから、もしも、出来るなら。叶うのなら――…




























 「…ねぇ、珊瑚。」
「んー?……」




 少し浅く、けれど長く、面と面が重なった。











































 …――叶うのなら、君のそばで、この愛の永遠を謳おうと。


 誓おうと、思います。















                                  -----------------End.
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 甘ッッッ!!(汗)
 何これ 甘いすごい甘いよ…何この人たち(お前の妄想だから) I Wishなんか聴いてたからですねきっと;どこまでほんわかしてたんだこの頃の自分は…。


 元々は「ロージー」「遥か」の締め括り、三部目のつもりで書き始めたものでした。だからすごく『両思い』を意識して書いたんですね。。
 でも前二作がお気に入り過ぎて…なんか、これで締め括るのはヤだなあ・って思っちゃったんです(汗) というわけでごめんねと思いながら緊急降板、イメージ曲から勝手にお言葉お借りしてタイトルつけて、背景画像も全然違うのセレクトしました。
 締めくくりには見合わない・と思ったとはいえ、今読むと色々表現気に入ってるのもあります。ところどころベタすぎて(でも修正のしようもない)見れないよーなとこもありますが…;(笑)