仮面










―――――――顔で笑って、心で泣いて。そんな事って、あるのかな―――……。













 どすん、と音がした。見れば、初夏の草むらにはありえぬ鮮やかな金色。
「………………………なーにやってんだ、七宝…………………………。」
半ばあきれ顔で金色を掴むと、下からはさらに鮮やかな青緑色の衣。すでに目を回している。
「……………まさか、木の上から落ちたのか?」
「…………………ず、図星じゃ……………………………。」
やっとの事で絞り出した返事を聞くと、半妖は大げさに溜息をついてからぐてっとしている子ぎつねを乱暴に肩へと乗せた。
「ったく、んなのんびりした状況じゃあねーんだからな。とっとと薬草だけ探せ!」
「や、やかましいっ!わかっとるわい!!」
 この二人だけでの薬草取りなど珍しいことこの上ない。だがこれにもやむを得ない事情があるのである。
 他の仲間達が全員毒に倒れた。なんとか冥加の機転によって生き長らえはしたものの、まだまだ本来の体力にまで回復したわけではない。全員が強がっているだけである。
「あいつら全員分の毒消し採らなきゃなんねえんだ。木登りして遊んでるヒマなんかねえ!!」
「わかっとると言うのに!おらはただ、木の上に木の実でもなっとらんかと思って登ってみただけじゃい!!」
「ほお〜、それで足滑らせて落ちたってか。」
「う゛っ…………………。」
「さ〜てとっとと行くぞー。」
「待てっ、犬夜叉―――っ!なんじゃそのいかにもバカの相手なんぞしてられんという感じのセリフは―――っ!!」
 なんとものどかなやりとりを繰り広げながら、二人は山奥へと踏み行っていった…。

 「…………大丈夫かなー、あの二人………………。」
心配そうに山を見やるのは、異国の衣装に身を包んだ少女。
「二人、というよりは二匹、と言った方がいいんじゃないですかぁー?」
対照的に、全くと言っていいほど心配もせずあっけらかんとけなすのは、法師。
「心配することなんかないだろ?あたしに言わせりゃ、どっちかって言ったらただの人間しかいないこの場の方がよっぽどあぶないしー。」
こちらも大して不安を覚えてはいないらしく、てきぱきと楓を手伝って夕餉の準備をしている、退治屋。そうそうその通り、と弥勒も同調するが、相変わらずかごめは心配そうだ。
「もう、珊瑚ちゃんも弥勒さまも冷たいんだからー………。二人とも、犬夜叉と七宝ちゃんが心配だとは思わないのおー?」
「「全ッ然?」」
見事にハモってみせた二人に、思わず溜息を漏らすかごめであった………。

 「………のう、犬夜叉―………。」
「なんでい。」
山に入ってから、既に半日…日も暮れて、犬夜叉と七宝は帰路に就く途中であった。
「…………犬夜叉は、顔で笑って心で泣いたりできるのか?」
「…………………………………………………はあ?」
力尽きて犬夜叉の肩にちょこんと乗っていた七宝が突然繰り出した問いに、思わず犬夜叉は聞き返した。
 …………………何言ってんだ、こいつ。
「だから、思っておることと反対の顔をしたりはできるのかと聞いとんのじゃ!」
肩の上で真剣な眼差しを己に向ける子ぎつねを、しばし凝視してから、そっぽを向いて答えた。
 「…けっ、んな器用なマネ出来るかよ。」
「やっぱり、そうじゃなあ………。」
「んだよ。お前には出来るのかあ?」
「おらではない、弥勒じゃ。あと、珊瑚とかごめもときどきそうじゃな。」
さらりと言ってのけられた事柄に、思わずコケた。
 「……………………てめえ、よくもまあ簡単に言いやがって………………。」
「なんじゃあ?言ってはいかんのか?本当の事じゃぞ?」
悪びれることもなく聞き返してくる七宝に、犬夜叉はぼそりと呟いただけであった。
「………………………………本当のことだから、まずいんだよ………………。」
もちろん、七宝は首を傾げるだけだった。
 そうだ、弥勒だけじゃねえんだよ、七宝。かごめだって珊瑚だって、もしかしたら俺だって心ん中じゃ泣いてるんだ……………。
 心の中だけで付け加えた台詞は、幼い昔の為に微かに甘く…そして、ひどく苦かった。










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 これまたありがち。ありがち過ぎた上、書き始めた理由も単に文字に飢えていただけだったので続くはずもありませんでした…(汗)
 書き出しだけは気に入ってたりします。