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七宝は悩んでいた。
「はあああ〜、どうしたもんじゃろ…。」
時をさかのぼること約三十分。犬夜叉一行は普段通りの旅の途中で、いつもの通り弥勒のインチキ(と、思われる)お払いで長者の屋敷に宿を見つけ、そしていつもの通りに…喧嘩していた。
始まりはもうお決まりで些細なことである。ここ数日の歩き詰めで疲労がたまったかごめのために、少しでも早く宿に着こうと足を早めていた一行の前にあの鋼牙が現れたのだ。
「よお、かごめっ!!なんか疲れてるみてえじゃねえか、俺がひとっ走りして休めそーな川辺にでも送ってやろーか?」
ここで割って入ってくるのは当然犬夜叉である。
「なに寝惚けたこと言ってやがる、痩せ狼。この場で死にたくなかったらとっとと失せな!」
「へっ、犬っころがキャンキャン吠えやがって。てめーこそさっさと自分の弱さを認めて正々堂々おれにかごめを譲れってんだ、負け犬がぁ!!」
「な゛っ………ちょ、調子に乗りやがってこのバカ狼が!ぶった斬ってやらあ!!」
「もー、犬夜叉、おすわりっ!」
みしっ、どしゃっ、「ぐえっ!」
「鋼牙君、送ってくれるっていう気持ちはすっっごく嬉しいんだけど、やっぱりみんなもいるから。弥勒さまや珊瑚ちゃん置いてあたしだけ行っちゃうのはだめでしょ?だからごめんねっ。今日のところは帰ってくれないかな…?」
一瞬の沈黙。鋼牙の答えはもちろん、
「分かった、かごめ!全く、お前のその仲間思いなところには感嘆するぜ。こらてめーら、かごめを大事にするんだぞ!!じゃあな、かごめ―――っ!犬っころ、かごめをあんまり辛い目に遭わせたらぶっ殺すぞーっ!!」
「なっ…って、あ゛―――っ!待ちやがれ、てめえっ!!」
叫んでいる間に、つむじ風は姿を消した。あとには寒ーい風がひゅーっと吹きつけるのみ。
「………かごめ、まーた逃がしやがったな。」
「だ、だって、ここで戦ってもなんにもならないし…やっぱり、早く進んだ方がいいと思って。」
「ですな。鋼牙と戦ってみてもどうせ決着なんぞつかないでしょうし。労力の無駄でしょ。」
「そうそう、かごめちゃん疲れてるんだから。体力バカのあんたとは違うんだよ。」
「うるせ――――――っ!!!なんでえてめーら、みんなしてかごめと鋼牙の肩持ちやがって!ふざけんじゃねえや、バカやろーっ!!」
「…なんですってぇ?」
「え゛。」
「何よ何よ、こっちはあんたの身も心配してあげてるのにっ!」
「なっ、なんでてめーが怒るんだよっ!?」
「あんたが人の心配に全ッ然気付きもせずに文句ばっかりいうからぁーっ!!」
こんな調子で口喧嘩を展開すること三十分。ようやく人里に出て、長者の屋敷の部屋に落ち着いた時にも、まだ喧嘩は続いていた。それどころか、ゆきだるま式にエスカレートした口喧嘩は「おすわり」の実力行使が数回執行済みというところまできていたのである。
では、弥勒と珊瑚の方はどうなのか。
彼らはそのかたわ傍らで傍観者に徹していた。が、途中で弥勒が部屋を抜けようとしたことから事態は一変する。
「ちょっと法師さま、どこ行く気?」
「ははは、いや、ちょっとそこまで………。」
明らかに何かを誤魔化そうとするにこやかな笑い。途端に珊瑚の目は疑い深げな半目に変わる。
「……まさか、女口説きに通りに出かけるとか言うんじゃないだろーね。」
と、何故か弥勒がちょっと目を見開いた。次の瞬間。
………にやり。今度は、何か良からぬことを思いついた笑みであった。
イヤな予感。珊瑚は直感でそう思った。そして、それは当たっていた。
「………もしかして、妬いてたりします?」
「な゛っ!だっ、誰がぁっ!!」
「あはははは、言ってるそばから顔が真っ赤ですよー?」
「………………………っ。」
完ッッ全に遊ばれてる。言われたとおりに耳まで真っ赤に染まりながら、珊瑚は思った。
「それじゃ、通りに出るのはやめてしばらく珊瑚と遊んでましょーかね?」
「ばっ………何言ってんのよっ、とっとと行けばっ!?」
「へー、じゃあこれから女二、三人引っ掛けてきますけど、構わないんですねー??」
「~~~~~~~っっ!!」
「ほらほら、どーするんですー?話してる間にも距離が縮まってるんですけどねぇ?」
「っ!!あっ?いっ、いつの間にっ………!」
確かに。先程は弥勒が部屋を出ようとしていたのだから二メートルは離れていたはずなのに、今では部屋の隅に座っている珊瑚の目と鼻の先にいる。
「ま、このまま口付けたって私は構わな………うおっ!?」
言いながらじりじりと距離を詰める弥勒に、遂に珊瑚がキレた。………溝落ちに思いっきり蹴りを入れたのである。
「…っくう〜っ…さ、珊瑚………今のは効きました……………。」
「も〜知らないっ、このスケベ法師っっ!!」
さて、こんな感じで両組の喧嘩は進んでいたのだが、この間、七宝はず―――っと二つの痴話喧嘩の板挟み。屋敷に到着してから更に三十分経過した今、やっと喧嘩が一段落して、屋敷を抜け出し通りに出てきたのだ。で、こうして悩んでいるわけである。
「あんなことでは、四人ともいつまでたってもくっつかん。おらがなんとかせねば…。」
……なにゆえにこの子狐は他人の恋の行く末にここまで思い悩んでいるのか。
ま、それはいいとして。
とにかく悩みに悩んでいた七宝の目に、小さな出店が飛び込んだ。どうやら、あちこちから仕入れた怪しげな雑貨ばかり取り扱っているようである。だが、通りから追われるようにぽつんと端っこにあるそれは、その時の七宝にはまるで自分を呼んでいるように見えた。…らしい。
そして、その中のひとつ、小さなガラスの瓶が七宝の目に留まってしまったのである。
「主、この瓶の中の水はなんじゃ?」
「へい、妖怪でも動物でもこの店は大歓迎!その瓶の中身はね、“惚れ薬”でさ。」
「“ホレグスリ”?なんじゃ、それは。」
もしもこのとき七宝が惚れ薬の真意をきちんと知っていたなら、この後の事態は起こらなかっただろうに。
「なんだ、知らないんですかい。つまりですね、この薬を一口飲むと…ああ、ややこしい。ま、簡単に言えばあっという間に男女が仲良くなっちまうってことですよ。」
「仲良く??ほんとうかっ!じゃあ買ったーっ!!」
「よく言いなさった、たぬきの旦那!!」
「きつねじゃい!」
あるじ主、説明を省略しちゃいかんだろう。…とっっっても重要な、
“一口飲むと、一番はじめに見た異性に惚れる”
という説明を………。
さてさて、長者の屋敷に戻った七宝。
(これを誰かに飲ませれば、みんなが仲良くなるんじゃ…!ん?しかし、誰がいいじゃろう?やはり犬夜叉は外せんなー、一番物わかりが悪くて意地っ張りじゃ。弥勒と珊瑚は…やっぱり珊瑚か。珊瑚さえその気になれば、後はどうにでもなるじゃろ。あとは、どうやって飲ませるか…!!)
全く、七宝の考えている“仲良く”はどの程度のものなのだろうか。特に、弥勒と珊瑚の場合の“どうにでも”。実際にはまず間違いなく七宝の考えるレベル―――手をつなぐなど、いわゆる爽やか青春少年お付き合いレベル―――では済まないだろう。
(そ―――じゃ!!かごめが犬夜叉用にと言っておったあの“ぺっとぼとる”のお茶の中に入れればいいんじゃ!犬夜叉用なんじゃから、飲むのも犬夜叉だけじゃろう!弥勒と珊瑚は…よし、珊瑚の水入れの中じゃ!あの竹筒に薬を混ぜておけば、そのうち珊瑚が飲むはず………。よおおおし、完璧じゃ―――!)
他の誰かがこの時の七宝の思考を知ったら、盛大なためいきをついたことだろう。もしかごめの「犬夜叉用」ペットボトルが、“犬夜叉と共用するため”に持ってこられていたとしたら、とはこの子狐はまったく考えもしなかったのだろうか。珊瑚の竹筒も、雲母と一緒に使っていたとしたら?
……ちらりとも思わなかったのである。
こうして、なんとも頼りのない七宝の「みんな仲良し計画」は着々と彼の思考の中で進められていった。
あっという間に日は暮れた。七宝は懸命にチャンスを伺っていた。
(かごめぇ〜っ!!早くりゅっくから離れてくれーっ!)
必死の願いにもかかわらず、かごめはいっこうに席を立たない。そろそろ七宝の集中力も限界に近づいたとき、神からの救いの手が差し伸べられた。(……と、七宝には思えた。)
「かごめーっ、珊瑚が呼んでるぞ―――っ?」
犬夜叉である。どうやら珊瑚にことづてを頼まれたらしい。
「わかった、すぐ行く―――っ!」
かごめが立った。
今じゃ!と、七宝は心の中で叫んだ。
てててっ、と走り、素早くびんの中身をペットボトルの中に入れる。ちゃんと半分残しておくのも忘れずに…よし、カンペキ。
「お次は珊瑚と弥勒じゃな…。」
つぶやきながら、そおっと珊瑚の竹筒を求め借りた部屋の中をさ迷う。すると……
「しめたっ!!誰もおらんっ!」
そう、誰も居なくなった部屋の隅っこの、矢筒・弓と飛来骨の横にそれはあった。
きょろきょろと辺りを見まわす。かごめはまだ戻っていない。七宝一人である。
「よし、竹筒の栓を開けて……くっ…栓がかたいっ…!」
精一杯、力をこめる。と、突然栓が、抜けた。
「ぎゃっ!!」
あまりに突然だったので、こけた。そしてその懐から、ころころと転がるもの。
「ああっ!!薬がぁっ!!」
そう、薬のびんである。しかも悪いことに…栓が、抜けている。
「わわわっ…ふうっ。どうにか少しはのこっとる…。」
底の方にやっとちょっぴり貯まる程度だけ、のこっていた。不幸中の幸いとはこのことであるが、犬夜叉達にとっては不幸以外のなにものでもない。
「…よし!これでみんなが仲良しじゃ!!」
たった今透明な液体を流し込んだ竹筒を自信まんまんで見やりながら、七宝はメンバーが帰ってくるのを待ち始めた…。
「あれ、七宝。一人で部屋の隅っこなんかで何やってんの?」
一番に戻ってきたのは珊瑚である。その肩には、しっかりと相棒の雲母が乗っている。
「い、いや、別に……。それより珊瑚、喉は乾かんか?」
突然の問いにさすがにいぶかしがりながらも、小さな七宝をそうは勘ぐることなく答えた。
「喉?あたしは別に……あ、雲母は乾いたかな?」
言いながらひょい、と雲母に視線を合わせると、欲しい、とでも言うかのようにみ〜、と鳴いた。
「やっぱり?歩いてるときに一回飲んだきりだもんね…ほら、水。」
手に取ったのは当然、あの竹筒である。七宝の顔から血の気が引いた。
一方珊瑚はそんな七宝の様子になど気が付きもせず、水を全部受け皿にあけてしまった。雲母も、美味しそうにそれをぴちゃぴちゃと舐め始める。……が、しかし。
「雲母!?どうしたの!?」
珊瑚が驚くのも無理はない、本ッ当にしつけはきちんとしているはずの雲母が、ばしゃんと乱暴に水をひっくり返したのである。
(き、雲母は鼻が利くから、薬の臭いを嗅ぎ取ってしまったんじゃな…それとも、野生の勘というやつかのう?あの薬はおらの鼻でも特に臭いは嗅ぎとれんかったし……。)
恐らくは「勘」のほうである。こぼした後も、ふんふんと疑い深げに臭いを嗅ぎまわり、不審の感の原因を突き止めようとしている。
「どうしちゃったんだろ……腐ってたのかなあ?今日汲んだばっかりなのに……。」
珊瑚も腑に落ちないという風情でこぼれた水を拭いていたが、結局、特に詮索はせずに雲母と遊び始めた。
七宝の方はというと、当然絶望の淵である。なにしろこれでもう薬はないのだ。
「ど、どうしよう……これでは弥勒と珊瑚がくっつかんではないかっ……!」
うろたえにうろたえているところへ、他のメンバー三人が帰ってきた。
「ただいま――。ありがと犬夜叉、もーなんかいっぱい貰っちゃって、困ってたのよ―。貢ぎ物なんて楓ばあちゃんの村以来だから……。」
「ほおー、前にもこんなことがあったので?」
「うん、桔梗の生まれ変わりだって聞いたら、村中のお年寄りの人達が拝んで来たりしてねー……。」
喋っている彼らは、大根やら白菜やら魚やら、たっぷりの農作物を抱えていた。特に犬夜叉の担当分量は多い。
「わあ、増えたねー、かごめちゃん。さっきあたしが運んだのも入れたらすごい量なんじゃない?」
「そうねー…あ、犬夜叉、喉乾いてない?お茶飲むー?」
七宝が薬を混入させたペットボトルをにこやかに取り出すかごめ。七宝は心の中でガッツポーズをとった。
(犬夜叉っ!飲むんじゃ飲むんじゃ飲むんじゃ〜〜っ!!!)
必死の七宝の思いを知ってか知らずか…いや、知らないのだが、いらないと言い張る犬夜叉をよそに、かごめが半ば強引にコップを取り出して茶を注いだ。
「はい、犬夜叉。」
にっこり笑って渡されると、もう犬夜叉も逆らえない。ちっと舌打ちしながらもコップを口に運んだ。
ここまでは、良かった。問題はここからである。
「あ〜あ、あたしも喉乾いちゃった。お茶飲もうかな。」
そして、本当に……かごめも飲んでしまったのである。
しぃぃぃぃぃん。軽く沈黙が降りる。弥勒と珊瑚は、動きを止めた二人にすぐには気づかなかったが、いちおう気づいた。
「………………どうしたの、ふたりとも………。」
「動きが止まってるんですけど……………。」
次の瞬間。
ばたん。
犬夜叉とかごめが、一度に、倒れた。
再び沈黙。そして、
「「わ゛―――――――――っっ!!」」←二人同時
「いいい犬夜叉ぁっ!?どうしちゃったのよ、ちょっとおっ!!」
「かっ、かごめさまっ!大丈夫ですかぁっ!?」
それぞれが近かった方に駆け寄るも、仲間はぐったりとして動かない。
(どどどどうしようっ!!おらのせいか!?おらのせいなのか―――っ!!??)
七宝は今更ながら自責の念に駆られていた。
もしや騙されて毒でも買ったのでは…?疑いは深まるばかりである。
そんな純情な子狐の心配をよそに、ようやく倒れた人々が目を開けた。
犬夜叉の目には、珊瑚が。
かごめの目には、弥勒が。
それぞれ映った。そして……
「珊瑚………………。」
「弥勒様……………。」
「え?」
「はい?」
なぜかぼんやりとした目つきの犬夜叉とかごめが次に取った行動は。
がっしと珊瑚の手を握り、一言。
「好きだ。」
「…………………………………………はああ?」
ゆっくりと弥勒の衣に手を伸ばし、顔を近寄らせながら、一言。
「好き。」
「…………………………………はあ!?」
二人そろって切なげに眉を寄せ、本来のパートナーとは違う相手に詰め寄る犬夜叉・かごめ。弥勒と珊瑚にしてみれば、前代未聞意味不明理解不能。
「かっ…かごめさまぁっ!?ななな何を言ってっ……!」
「だから、好きなの。」
ぎゅうっと弥勒の袈裟を握り、うるんだ目をしてさらに近づく。
「ね、あたしのこと好き?好きだよね?」
「あっ、あのねえっ!!言う相手を間違えてるんじゃないですか!?そーゆーのは犬夜叉に向けるべき言葉でしょう!!」
「犬夜叉はもういいの。あたし、弥勒様のほうが好き。ねえ、だから……。」
さらりと“犬夜叉はいらない宣言”をかました上に、腕をするりと弥勒の首に絡めてきた。
……………まるっきり別人。
さて、犬夜叉と珊瑚はというと。
手を握られた珊瑚は、やっぱり赤くなっていた。一方の犬夜叉は普段の彼らしくなく切なげな表情のままで珊瑚を見つめている。
「ばっ、ばばば馬っ鹿じゃないのぉっ!?あんたが好きなのはかごめちゃんだろおっ!?とっとと本命のとこに行きなってばっ!!」
「かごめなんてもうどうでもいいッ!!俺はお前が好きなんだっ!!」
犬夜叉の爆弾発言に、珊瑚は口をあんぐりと開けたまま固まった。
あの、かごめちゃんが一日居ないだけでも騒ぎ出す犬夜叉が、何よりもかごめちゃんの事ばっかり気にしている犬夜叉が………
………あたしに、「好きだ」、だと?
―――…ふざけるな。
次の瞬間、珊瑚の鉄拳が火を吹いた。
壁に思いっきりぶち当たった犬夜叉に向かい、珊瑚はさらに怒鳴り上げる。
「ぜっったいおかしいよあんたっ!!いつもはかごめかごめってそればっかのくせして!いっぺん水ん中飛び込んでアタマ冷やしてくるんだね、この唐変木っ!!」
そして……本当に、蹴り飛ばした。
宙を舞った犬夜叉は、外にあった井戸の中へ見事にゴール・イン。
「ったく、どーなってんのよ!?」
「いや、さすが珊瑚……。」
あの細い体でよくもまあ、あそこまで蹴り飛ばせるもんだ…なんて感心している場合ではない。かごめの顔が少しずつ迫ってきていた。
「すいませんが、私としてはかごめさまだけは、ごめんですっ!」
あなた相手は犬夜叉に鋼牙にと馬鹿ばっかりいて大変そうですから、とぼやきながら、回されかけていたかごめの腕から、するりと抜け出た。素早く珊瑚のところに移動する。
「とりあえず、逃げましょうっ!!」
「そうだね、犬夜叉が復活するとまずい!」
数々の疑問を後回しにして、七宝・雲母を引っ掴んでから二人は部屋を走り出た…。
「……で……どうなってんの?これって…。」
「さあ……私にはさっぱり。」
首をかしげる二人が居るのは、屋根裏部屋。追ってくるかごめをひとまず捲いてから、天井の板をはがして入り込んだのである。
「なんだか知らんが、犬夜叉もかごめさまも正気じゃないことだけは確かですな。」
「言えてる。」
それっきり、話すのをやめると、もう何度目かも分からない長〜いため息をついた。
「犬夜叉はかごめちゃんほったらかしであたしに好きだの惚れたの言ってくるし……あれじゃ鋼牙と一緒じゃないか。こっちの言うコトまるで無視!」
ぷんぷんと顔を上気させながらそれでも声は潜めて珊瑚は怒る。そんな彼女の様子を見ながら、弥勒は苦笑いした。
「はは、全くですな……かごめさまの方なぞ、潤んだ瞳でまっすぐ見つめながら抱きついてくるんだから、耐えるこちらが大変で………」
「ちょっと、一体なにに耐えるっての?つーか、かごめちゃんに手ェ出したらこのあたしが直々にあの世に送ってやるからね。」
はあ、こんな事態なのに珊瑚まで恐い……などとぼやいている弥勒をよそに、珊瑚の注意は先程から黙りこくっている七宝へと向いていた。
「…………七宝。」
「なななっ、なんじゃあっ!?」
明らかにうろたえる子狐に、弥勒も怪訝な目を向ける。
「………お前、なんか隠してますね?」
「ぎくり。」
「おとなしく吐きな、七宝。黙ってるとタメになんないよ??」
すでに七宝へと向けられる視線は疑惑から確信へ移ると共に冷たくなっていた。
「………あ、あの、実は…………」
あっさりと、七宝は喋ったのだった。
「……………………………………………………………………。」
全てを聞き終えた弥勒と珊瑚は、一様に黙り込んでいた。
珊瑚は、膝を抱きかかえるようにして、俯いて。
弥勒は、右手を顔に当てて。
「…………………………………………はあ〜〜〜あ。」
長い長い、それまでとは比にならないほどに長いため息を、ついた。
「………で?薬の効果を切らす方法は?」
もはや呆れ果ててものを言うのも面倒になってきた弥勒は、半ば投げやりに問いかけた。
「え゛?え、え〜と……」
「………分かんないんだね?」
珊瑚も、とても優しい言葉を掛けてやる気にはなれなかった。
「……どうします?」
「……もう、その出店もないだろうし……薬が、時間が経てば切れるものであることを、祈るのみだね。」
「………すまんのう……………。」
ため息が三つ、重なった。
その時である。
珊瑚の背後の床……いや、下から見れば天井に、突如穴が空いた。
「わあっ!!?」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
これまたありがち、「惚れ薬」ネタ。ヨッシーの木の実よりは素直な内容ですね。普通に惚れ薬です。
この頃は犬珊にはまってたなあ。ははは。
タイトルも本当になげやり。保存する時考えるのも面倒で適当に付けちゃった気がする(考えろ)
やっぱり出だしは気に入っているのです。