「ねっ、珊瑚ちゃんっっ!どれが良い?」
にこやかに言いながら、かごめは珊瑚との間の床にそれらをばらばらと並べた。
珊瑚は、きょとんとして見ている。
『聖夜の心得』
「…なぁに?これ……きらきらしてる、けど。」
「あのね、ビーズっていうんだけどさ、ガラス球とかに穴を開けて、糸に通せるようにしてあるんだよ。そいで、これをいっぱいいっぱい繋げると、色んな物が出来るの!」
「…。で、これは?」
「その材料!!」
きっぱりと言い放ち、その内の一袋を取り上げる。透明なナイロンの袋の中で、ざら、と軽くビーズのこすれあう音がした。戸口から微かに差す日差しで、それらは一瞬きらめいた。
「でね、もうすぐ私の時代で言う“クリスマス”があるんだけど、その日にはみんな、大事な人に贈り物をするのよ。」
「お、贈り物……」
「そゆこと。だから、珊瑚ちゃんも弥勒さまになんかあげれば良いんじゃないかなーって思って、」
「ちょちょっ、ちょっと待ってかごめちゃんッ、あたし法師さまにあげるなんて一言もっ……」
「じゃ、誰にあげるの」
「……」
「はい、話進めるわよー。それでね、色々考えたんだけど、こっちってあんまりのんびり出来ないじゃない?編み物とかって結構時間も手間もかかるし、材料もかさばって邪魔だし…お菓子なんてオーブンも無いこんなとこじゃそれこそ困難の極み」
「…あみもの?おーぶん?」
「ま、解んない現代語は置いといて、」
ずい、と前に出る。
「そこで思いついたのがこれ、ビーズ!かさばんないし出来上がった物自体も持ち運び簡単だし、まーちょっっと作るのに集中力は要るけど珊瑚ちゃんなら絶対楽勝ッ!!ってことで、」
再び、
「どれが良い?」
訊いた。
「……。」
困惑したようにしばらく沈黙する。実際、珊瑚は考えあぐねていた。
かごめの熱心な説明も生憎だが良く解らなかった。だがとりあえず、並べられた袋たちに付いている綺麗な絵を見ると、その球全てを上手く繋げればこういう形になるらしい・とは理解した。きょろきょろと眺め渡す。
それぞれの袋である程度色の系統が分かれていた。赤っぽい袋、青っぽい袋。ああ、どれを選べば良いと言うんだろうか。
「そんなに悩まなくたって良いのよ」
不意に、かごめが言った。顔を上げ、その表情を見てみる。やっぱり微笑っていた。
「何をあげれば一番良いか・っていうかさ、実際問題珊瑚ちゃんがくれるもんならなんだって喜ぶと思うのよね、弥勒さまは」
「…そ、かな……」
「だからね、大事なのは、もっと簡単なことで、」
言いながら自分で照れてきたのか、少し頬を染めながら、それでも笑みをいっぱい浮かべて。
「珊瑚ちゃんが、どれくらい弥勒さまのこと考えて作れるか、だと思うよ。」
だから、と続ける。
「…やっぱ、見てて弥勒さまのこと思い出すような、イメージ似てるものがいいと思う。」
ぽけ、としてしばらくかごめを見つめる。そして、
「……いめーじ?」
訊いた。
なんとかかごめの必死の説明により「イメージ」の意味を理解して、それからやっぱり悩んだけれど結局青と緑の混じったようなビーズがたくさん入ったセットに決めた。
それは弥勒のイメージでもあったけれど、それよりも……似ている、気がしたのだ。
あの時の数珠に。
弥勒からの(今のところは)最初で最後のプレゼント、もらったその日に砕け散ってしまった、けれど。
退治のためとは言え、やっぱり勿体無かった気がしてならなかった。
勿体無い・というかなんというか、もらったその事実が嬉しくて、今でもあの蒼さの奥に濃緑を秘めた綺麗なきらめきを思い出すと何故だか胸の何処かが温かくなったりするんだ。
説明書の最後のほうを見る限りでは、完成したそれは『ブレスレット』つまり腕輪、になるらしい。これもちょうど良いと思った。
数珠の、お返しなんだ。
小さな小さなガラス球たち、透明な糸に通して連ねて、少しずつ形が出来ていく。かごめは集中力が要る・と言っていたけれど、それは思ったよりずっと楽で面白かった。
一粒、二粒、想いを込めて。
ねえ法師さま、あたし、法師さまと居て色んなことを思ったよ。
かごめちゃんたちと居て思ったようなことも、里のみんなと一緒に居て思ったようなことも、法師さまと居る時だけに想ったようことも。
寂しかった嬉しかった苛々した苦しかった楽しかった哀しかった――
――…愛おしかった。
高く澄んだ小さい音を立てて、ガラスの一粒が積まれた粒たちにぶつかりそこに落ち着く。
少しずつ少しずつ、想いを編みこんで、それは出来ていった。
「私に?」
きょとんとした瞳が真っ直ぐにこちらを見つめる。一瞬気圧されて、それからすぐにこれじゃ駄目なんだと軽く首を横に振った。
「え、違うんですか?」
「へ?あ、ああっ、違う違うッこっちの話っっ!!」
慌ててさらに激しく首を横に振ってから、
「…法師さま、に。これ―…あげる。」
かごめは可愛い包装紙で包んであげようと言ってくれたけれどなんとなく照れくさくてそのままで、珊瑚はぶっきらぼうに作りたてのそれを差し出した。チャリ、と、軽い音がした。
「……手作り?」
「いいいいやッ玉を連ねてくだけだし…そんな大層なもんじゃ」
「そんなことないでしょ」
ちゃらちゃらと方向を変えて眺め、そしてにこっと微笑って、
「珊瑚が作ってくれたなら、なんだって有り難いです。どんな霊力を秘めた数珠よりも」
きっぱりと言った。
「……かごめちゃんの言った通りだ……」
「はぁ?」
「う、ううん」
まさかほんとにそんな風に思ってもらえるなんて思ってなかったから、嬉しい、けど。
例えに数珠が出てきたことで少しどきっとしたものの、なんとか顔をあまりうつむかせないようにして、
「…喜んでもらえて、良かったよ」
少し、微笑った。
「でも私、なんにも用意して無いんですよね」
「え?」
「お返し。」
「…別に要らない、けど……」
「いえ、まぁ一応感謝の気持ちってことで」
にゅっと手を伸ばす。通したビーズ飾りがまた鳴った。きちんと正座した膝に置かれていた珊瑚の白い手を少し強めに握った。一瞬の震えが伝わる。
「へ……」
「嬉しかったですよ。」
「いや、あの」
言い終える前に、視界が墨衣と袈裟で塞がれた。わっと小さく悲鳴をあげる。
「あったかいでしょ」
「そりゃあったかいけどさって違うだろっ、良いよホントお礼なんてなんでも良いから放してよッ」
「嫌」
「や、待っ……っきゃッ」
反射的に甲高い悲鳴をあげた瞬間、ばた、と背後の窓の木戸が開いた。同時にぼたぼたと雪が弥勒の頭上に降り注ぐ。
「っ、冷てッ……!?」
「クリスマスはねぇー、“聖夜”とも言うのよ」
小さなおもちゃのバケツをくるくる回しながら、かごめが半ば冷めた目でこちらを見下ろしていた。
「聖なる夜くらい、清く正しく過ごしましょーね弥勒さま?」
にっこりと笑う。半分恨めしそうにその笑顔を見つめながら、早くも溶け始めた雪を滴らせ、
「……残念」
「何が残念だこらッ!!」
半分押し倒された格好で精一杯叫びながら、珊瑚は、やはりすっかり火照った頬に頭上からぽたぽたと滴る雪解け水が酷く冷たくて心地良いと感じていた。
ああ、やっぱり。
あたしは、あなたが居るから、寂しくて嬉しくて苛々して苦しくて楽しくて哀しくて、
あなたが、愛おしくてたまらないんです。
---------------Merry Christmas!!
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はい、クリスマス記念フリー小説でございました(笑)しかし…これ、もうずいぶん前のなんですね!(大汗(今更)) なんか去年ぐらいのよーな気がしてた…。もう二年近く前だよオイ!;;
この頃はまだこんな気力が残ってたんですね。今自分そんなに気ぃ続かないよ(弱ぇ)
まぁ、クリスマスならやっぱりプレゼントだろうということで。珊瑚嬢がんばりました(笑) でも法師は相変わらずで…かごめ嬢も相変わらずで(ぇ
タイトルの「聖夜」が一発変換では必ず「誠也」になったのも今ではいい思い出です(でも根に持ってる) 今は変換したら「所為や」になりました…てめっ
一体どんな進化してんだァァァァァパソォォォ!!(壊れた(自分が))