ヨッシーの木の実
「あ゛〜……」
真昼の太陽の下、ただ静かにざわめく木々の間に、少しばかりヤケ気味の声が、一つ。
「…ハラ減った。」
三つ編みが、風に揺れた。
こうなったそもそもの原因である数十分前を思い出す。
いつもと変わらなかったのだ。いつも通り、炊事担当の煉骨が材料を取って来いと他の連中に言いつけ、全員が渋々ながらもそれに従って。
違ったのは――…そう、ちょっと。ほんのちょっとだけ、自分がツイていなかった事。
今でもありありと思い出せる。自分はいつものように、採って来た喰えそうな物をただ他の面子が採ってきた物の上に重ねて置こうとしただけ。
だが今日は“たまたま”蹴つまづくには丁度良い小石がその通り道に転がっていて、そしていつもなら軽く避けられるものが今日に限って“たまたま”なんとなく引っかかってしまって、すっ転んだ先が“たまたま”皆の食べ物の上で、そしてそのすぐそばに“たまたま”流れが深くて急な川が流れていたのだった。
加えて、それらがどぼどぼと大きな音を立てて川に落ちたひょうしに上がった水しぶきが“たまたま”煉骨の火薬一式に派手にかかって“たまたま”そこには煉骨の持っている火薬の全てが集められていたりしたのである。
空気が音を立ててヒビ割れ暗雲がざわめき木々が葉を擦り合わせひたすら騒いだ。
「……こんのっ、クソガキが―――っ!!!」
「うわわわっ、煉骨待ってちょっと待ってーっ!!」
「待たんっ、今日こそテメーにもの言わせてやる!!」
「やだっ、ちょっと待ってよぅ煉骨の兄貴ぃー!蛮骨の大兄貴はお・れ・の!いくら腹立ったからって殺しちゃヤ―ぁ―っ!!っう゛!」
涙ながらに訴える彼の腹に、かばってあげた当の本人からみぞおちに回し蹴りのプレゼント。
「ったくっ!誰がいつからてめえのもんになったよ!!」
「はは、やっぱいつ喰らっても素敵なくらいにためらいのない蹴り…だから大兄貴、好きーvv」
「…っ、変態と馬鹿はっ………」
ぶおんと風を切り、ハリセンがうなった。
「そろって地獄の果てへ消え失せろ――――っっ!!!」
轟音。そして僅かな叫びと水音、それから静かな風の音。
で、蛇骨は川へ、蛮骨は森のど真ん中へと吹っ飛ばされたわけである。
起き上がってすぐに戻ろうと思ったが、遠い空に赤い煙が立ち昇るのを認め思い止まった。
赤いのろしは危険を知らせる合図。それは同時に「来るな」を表しており、この場合は仲間を思いやってではなく「てめえらはメシ抜きだ近寄ったらぶっ殺すぞ」という意味を成していた。
そして、今に至る。
「どーしよっかなー…蛮竜置いてきちまったからなんか手持ち無沙汰で淋しいしー。蛇骨はどうしたのかねぇー飛ばされた時うしろの方で水の音した気ぃしたけど、まあ気のせいであるように祈っとくかぁ…一応あんなんでも仲間だしー……ん?」
ぶちぶちとぼやく彼の目に飛び込んできたものは、木にぽつんと一つだけ生った実だった。赤と緑の水玉模様で、見るからに“喰えないモノ”。
が、しかし。
「……喰える、よ、なあ。」
彼の視点は、常人のそれとは少々異なっていたようである。
「まぁー、旨かねえだろうけど……」
ためらうことなく、もぎ取る。
「メシ抜きよりは、マシだよな!」
元気良く言い切り、かぶりついた。そして。
全然、マシじゃなかった。
「なぁー、煉骨…。」
「なんだ。手短に言え、睡骨。」
「そろそろ許してやったらどうだ?」
そう言いつつも、彼自身はすでに味噌汁(ほぼ山菜と爬虫類、もしくは両生類のごった煮だが)をすすっており、心底どうでもよさ気である。対して未だ不機嫌そうな坊主頭の男は、
「まだだ。」
自分はしっかりと素直に“手短に”言い切り、ぱたぱたとウチワであおぐ。あの、危険を知らせる赤いのろしを、辛抱強く撒き散らし続けていたのだ。
「あんのクソ野郎ども、今日と言う今日は勘弁ならねえ…ぜっってえ半径十里(約四十km)以内には入れねえからな…。」
「十里…って、広……。」
ぷんぷんと怒りまくる煉骨の耳にがさりという音が届いたのは、その時だった。
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これは七人隊好きの友達の発案で書き出して結局挫折したもの。彼女が蛮蛇好きなため微妙にその気が入ってたりしますが私自身は別にどうでもいいのでそこはかとなくになってます。
ちなみに仮タイトルの由来は単に蛮骨の兄貴が食べた実がヨッシーの卵みたいだからです(うわ)。もともとは漫画で、しかもそっちでは蛇骨がこの実を食べて珊瑚嬢に惚れるという完全に原作の物語性も人間性も無視したギャグ重視のものだったりします。最近の管理人、珊瑚総受け気味なのでね…はは(え)。蛇珊をはじめ蛮珊・犬珊・煉珊に殺珊も嫌いじゃなかったり…まあいいか(よくない)
あ、それからこのあとの展開を言うと、木の実の性質自体は簡単に言えば「愛情を向ける対象の性別が逆になる」、つまり蛇骨なら今まで男好きだったから女好きになるし、当然蛮骨が食べれば…ははは蛮蛇好きの友達が書きたがるわけです(え)
当然、挫折した理由もこの展開にあるわけ。(笑)